長野県長野市の就労継続支援B型事業所「カンタービレ」さんを訪ねました。
長ネギや豆など野菜の栽培を中心に、薫り高い自家焙煎珈琲などを手掛け、地域とつながる仕事をしています。
畑で育てたものが、人の手を通して商品になり、誰かの食卓に届いていく。
その一つひとつの流れが、とても丁寧に積み重ねられている場所でした。
自分の人生を選び直したところから
迎えてくださったのは、管理者・サービス管理責任者の大竹尚美さんです。
名古屋から2020年に長野へ移住し、2021年8月にこの事業所を立ち上げました。
これまで、障害者基幹相談支援センターや地域生活定着支援センターで、触法や精神障害のある方の支援に携わってきました。
今回の移住にあたり、就労支援は未経験だったものの、長野大学大学院で福祉を専攻し、農福連携の実践塾などで知識を積み重ねてきたといいます。
もともと名古屋に住んでいた頃から、農家へボランティアに行ったり、友人の畑に通い、畑に立っていたそうです。
土に触れる時間が、自分の中で大切なものになっていたと話してくれました。
「長野に来てよかったのは、食べ物が本当に美味しいことと、時間の流れがゆったりしていることです」
その言葉どおり、この場所にはどこか余白がある、珈琲を焙煎する薫り高い空気が流れていました。
小さな現場で向き合う日々
現在、職員4名と利用者10~12名。
農作業を中心に、それぞれのペースに合わせて関わりながら日々の仕事が進んでいます。
長野の農村部は車社会のため、通所には送迎が欠かせませんし、農家の作業ニーズに応えるため、朝8時半から稼働できる体制も整えています。
人手は決して足りているわけではありません。
それでも、大竹さんは「できる形で続けること」を大切にしています。
地域の美容院などのつながりから、ひきこもり状態にある方へ声をかけ、少しずつ関係を築いてきました。実際に、週1回ボランティアとして通うようになった方もいます。
支援というよりも、「一緒に場をつくる」という感覚に近いのかもしれません。
畑から始まる、いのちの息吹と商品づくり
カンタービレでは、新しくぶどうの栽培に取り組んでいます。
ぶどうはナガノパープル、シャインマスカット、雄宝などの品種で、今年で作付け2年目となりました。
野菜は有機農業にこだわりながら、無理のない形で栽培面積を広げています。
また、地域との循環を意識し、評判の良い地元のお米を仕入れて販売するなど、「つくる」だけでなく「届ける」ことにも力を入れています。
さらに今後は、キッチンカーでの展開も予定しています。
自分たちで育てたさまざまな種類の豆や有機栽培のトマトを使ったミネストローネなど、食材の良さがそのまま伝わる形で提供していく予定です。
畑と食卓がつながる感覚を、その場で味わえるような取り組みです。
マルシェで見かけたらぜひ応援してください。
働く女性として、支える側として
大竹さんは、4人の子育てを終えたあとに長野へ移住し、この事業を立ち上げました。
約10年の専業主婦の期間を経て、再就職は時給850円のデイサービスからのスタートだったといいます。
大竹さんが支援者として大切にしているのは、「自分自身も成長し続けること」だと話されます。
地域や行政などのリソースを活かしながら、利用者のために力をつけていくこと。
そして、事業として利益を生み、それを利用者や地域に還元していくこと。
その考え方は、同じように働く女性や支援者にとって、大きな励みになるはずです。
シナのモノがたりより
大竹さんの話を聞いていると、特別なことをしているというよりも、「やると決めたことを続けてきた人」という印象が残りました。
畑に出かけていく利用者の方々に「お茶を持ってね。無理しないで行ってきてね」と声がけをして、自主性や達成感を味わえるような細やかな心遣いがありました。
一緒に畑に立ち、人と向き合い、少しずつ形にしていく。
その積み重ねが、そのまま事業所の空気になっています。
華やかではないけれど、確かな手応えがある。そんな現場でした。
これからキッチンカーや商品展開が進めば、さらに多くの人にこの場所の魅力が伝わっていくはずです。
その過程ごと応援したくなるような、そんな力があります。