千葉県いすみ市を走る第三セクター鉄道、いすみ鉄道株式会社さんを訪ねました。
本来は人を運ぶことを目的とした鉄道会社ですが、地域の食材を活かした商品開発にも力を入れています。
その背景には、厳しい現実があります。
台風や豪雨などの災害の影響により、現在はいすみ鉄道の運行は止まっています。
鉄道としての役割を果たせない中でも、地域とともに生き残るための挑戦が続いています。
「ここには、なにもない」がある場所
出迎えてくださったのは、地域連携推進本部の吉田貴文さんと、商品企画を担当する菰田路子さん。
そして代表取締役の小竹孝一さんも顔を出してくださいました。
いすみ鉄道には、象徴的な言葉があります。
「ここには、“なにもない”があります」
何もないからこそ、見えてくるものがある。
何もないからこそ、つくれるものがある。
小竹さんは、この地域について「心を整えるリセットボタンのような場所」と表現します。
訪れる人が日常を見直し、何度も帰ってきたくなる場所でありたいと考えています。
鉄道会社が商品をつくる理由
沿線人口の減少や自然災害など、鉄道を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。
「乗ってもらう」だけでは、鉄道は守れない。
だからこそ、いすみ鉄道は地域とつながり、新しい価値を生み出すことに力を入れています。
コラボ商品として有名なのが、うまい棒ならぬ「い鉄棒(チーズ味)」。
地元企業と連携して生まれた商品で、遊び心と地域性が感じられます。
鉄道会社でありながら、「地域の魅力を届ける会社」へと舵を切っています。
「菜の花うどん」に込めた思い
その中でも象徴的なのが、社会福祉法人土穂会ピア宮敷とのコラボ商品「菜の花うどん」です。
いすみ鉄道の沿線は、「桜と菜の花」の風景で知られ、春には“菜の花列車”として親しまれています。
この景色を形として残したいという思いから、商品開発が始まりました。
ピア宮敷では、菜の花の葉を乾燥・粉末化した「菜の花パウダー」を開発しています。
それを練り込んだうどんは、鮮やかな緑色とやさしい風味が特徴です。
この商品は、福祉・農業・観光が連携して生まれた“地域共生型の商品”。
農福連携の取り組みとしても評価され、農福連携等応援コンソーシアムから感謝状が授与されました。
美味しさと風景がつながる
実際に社員の皆さんに食べ方を伺うと、皆さんが口を揃えて勧めてくれたのが「サラダうどん」でした。
冷たい麺にトマトを添え、バジルソースで和える。
菜の花のやさしい緑とトマトの赤が映え、見た目にも元気で美しい一皿になります。
もちろん温かいうどんとしても美味しいのですが、「色と風味を楽しむなら冷たい方がいいですね」と笑顔で教えてくださいました。
ピア宮敷のごま油やラー油、「ごまからちゃん」と合わせるのもおすすめとのこと。
地域の中で、食材同士が自然につながっていくのも、この取り組みの魅力です。
鉄道がつなぐ、地域の未来
いすみ鉄道が目指しているのは、単なる交通機関ではありません。
地域の人や企業、福祉とつながりながら、新しい価値を生み出していく存在です。
運行が止まっている今も、手を止めることはありません。
むしろ今だからこそ、できることを積み重ねています。
「最後に残れる鉄道、残せる愛ある鉄道にしたい」
その言葉には、地域とともに生きていく覚悟が感じられました。
シナのモノがたりより
取材を通して感じたのは、「あきらめていない会社」だということでした。
鉄道が動かなくても、地域との関係をつなぎ続ける。
商品という形で、いすみの魅力を外へ届けていく。
その姿勢は、とてもまっすぐで、そして現実的です。
菜の花うどんは、ただの名産品ではありません。
この地域をなんとか残したいという思いが、そのまま形になったものだと感じました。
想いのこもった商品を見る
い鉄棒や菜の花うどんなど、地域とともに生まれた商品が揃っています。
食べることで、この土地の物語に触れることができます。

いすみ鉄道株式会社さんが手がける商品を、一覧ページでご紹介しています。
気になった商品がありましたら、ぜひチェックしてみてください。