ウォームブランケット

もう一度、働く力を取り戻す場所 

長野県上田市で、ジビエを使ったレトルト食品の製造と就労支援を行う株式会社ウォームブランケットさんを訪ねました。 今回は同社が運営する就労移行支援事業所「リズム」を中心に、お話を伺いました。 

ここで行われているのは、単なる就労支援ではありません。 「もう一度働きたい」と願う人の、再出発を支える取り組みです。 

「ライナスの毛布」のような存在でありたい 

迎えてくださったのは、代表であり作業療法士の小林博之さんです。 精神科病院や職業センターなどで支援に携わってきた経験を経て、2016年に事業所を立ち上げました。 

小林さんがたどり着いたのは、「働くこと」が持つ意味でした。 

「働くことは、収入を得るためだけではなく、その人の存在を支えるものだと思っています」 

企業理念は、「地域社会の“ライナスの毛布”になること」。 『ピーナッツ』に登場する毛布のように、不安を抱える人に寄り添い、安心と希望を渡す存在でありたいと語ります。 

その言葉どおり、この場所には人を急かさない空気がありました。 

 復職という、もう一つの挑戦 

就労移行支援事業所「リズム」では、休職している方の復職支援を行っています。 一度立ち止まった状態から、再び働き始めることは決して簡単ではありません。 

焦りや不安を抱えたままでは、同じことを繰り返してしまう可能性もあります。 だからこそ、ここでは「急がないこと」を大切にしています。 

農作業を通じて体力を確認しながら、これまでの働き方を振り返る。 生活全体を整えながら、少しずつ戻っていく。 

長野の空を見上げ、ぶどう畑の緑に囲まれる時間の中で、 「もう一度やってみよう」と思える準備が整っていきます。 

屋外での作業は、気持ちを切り替える力があります。 作物は手をかけた分だけ応えてくれるため、達成感も得やすいといいます。 

この復職プログラムは、独自に開発されたもので、すでに7年続いています。 

支援がそのまま商品になる 

ウォームブランケットの特徴は、支援とものづくりがつながっていることです。 

製造しているのは、鹿肉の赤ワイン煮込みや低糖質のカレーなどのレトルト食品。 地元・真田のジビエや、マリコワイナリーのワインを使っています。 

ワインの原料となるぶどう畑では、利用者が農作業に関わっています。 さらに、系列の就労継続支援A型・B型事業所とも連携し、製造工程にも障がいのある方が参加しています。 

畑から商品までが一つの流れになっており、 支援の現場で生まれたものが、そのまま価値として社会に届けられています。 

鹿肉は、猟師の方から直接仕入れています。 衛生管理や鮮度に十分配慮しながら、安心して食べられる形に仕上げています。 

体にもやさしく、誰にでも届く食事 

商品は「体にやさしい」ことにもこだわっています。 

低糖質カレーはグルテンフリーで、小麦アレルギーのある方でも安心して食べることができます。 唐辛子を使っていないため、子どもから高齢の方まで食べやすい味に仕上がっています。 

野菜とたんぱく質がしっかり摂れるため、日常の食事としても、災害時の備えとしても役立ちます。 実際に、地元スーパーではイートインで提供され、その場で食べられる商品としても展開されています。 

“おいしくて、やさしくて、役に立つ”。 そのバランスが、この商品の魅力です。 

地域とともに続いていく仕事 

この取り組みは、農福連携と地域創生が重なり合う形で広がっています。 獣害対策としての捕獲、農業の支援、商品開発、就労の場づくり。 

それぞれが分断されるのではなく、一つの循環としてつながっています。 

小林さんは、このモデルをさらに広げていきたいと話していました。 支援が支援で終わるのではなく、社会の中で意味を持つ形にしていくこと。 

その先にあるのは、「働くことが希望になる社会」なのかもしれません。 

シナのモノがたりより 

この場所で感じたのは、「やり直せる」という静かな確信でした。 

一度立ち止まった人が、もう一度歩き出すための時間と環境がここにはあります。 そして、その過程で生まれたものが、きちんと価値として社会に届いている。 

支援と仕事が分かれていないからこそ、生まれる強さがあります。 

ただ優しいだけではない、現実的で役立つ形で人を支えている現場でした。